2021北海道ツーリング7日目:支笏湖

旅に出ると思ったよりも自分がコントロールできるものがないことに気付く。特に北海道ではそれをより強く実感する。

朝起きてみると雨は止んでいたが、昨夜はかなり雨が降ったらしい。天気予報を見ると北海道では広範囲に雨が降ったり止んだりするらしい。悩んでも仕方ないので雨が降る前に支度してホテルを出る。

せっかく富良野に泊まったので少しだけでもいいので富良野と美瑛の美しい風景を楽しみたい。そう思いながら美瑛に向かった。富良野川を渡ると向かう先は白い霧に包まれている。まだ「白い」のが救いかな。

実は富良野の農道を走るのも結構好きだ。美瑛のような派手さはないが、長閑な畑の中のまっすぐな道をゆっくりのんびり走るのはなかなか気持ちがいい。しかし、それも天気がいいときの話で今日みたいな天気だと素直に楽しめない。雲の中から太陽が見えるのはまだ雲が薄いということなので少し希望を持ってみるが、

世の中はそんなに甘くない。

あゝ、降ってきた!それも当たると痛いくらい雨粒が大きい。バイクで走ってるとまた激しくぶつかってくる。

今回霧と強雨は共存できないことを初めて知った。霧が雨に一瞬で流されてしまうのだ。なるほど。

富良野から美瑛までは約30分。土砂降りの中を走りながら何度も南の方に引き返すか悩んだが、ここまできて諦めることはできない。美瑛は北海道の大好きな場所の一つだし、観光客がいない美瑛はこれが最後のチャンスなのかもしれない。

お!願いが通じたのか晴れてきた!雨が止むだけでもよかったのに青い空まで見れるとは!嬉しすぎる。同じ青空でもその感動のレベルが全く違う。

マイルドセブンの丘。朝早いのもあって、誰もいない絶景を独り占めした。あの坂の上の木は5本まで減ってしまったが、それはそれでいいのかもしれない。

光によって畑の緑色が変わっていくのが面白い。しかし、また雲が増えてきた。今年の美瑛はこのくらいで満足したほうがよさそう。

美しい景色をありがとう!

マイルドセブンの丘を満喫した後は札幌2りんかんに向かった。やっぱり雨の中を走るには今のタイヤのコンディションでは不安を感じる。朝の土砂降りでタイヤ交換を決めたが、まだ営業開始前なので在庫確認などできずとりあえず行ってみるしかない。昨日電話して予約しとけばよかった。

美瑛から北広島市に近い札幌青田区の2りんかんまでをナビに入れたらグーグル先生が道道70号線を教えてくれた。

最初は自然が豊かでいい道だと思ったのに急にアスファルトがなくなる!フラットではあるけど未舗装区間が11kmもあってその上ヘアピンに違いカーブが多い。極端にRが小さいカーブはその部分だけ舗装されているが、それ以外部分は言葉通りの未舗装道路。未舗装区間のカーブで滑ってヒヤッとした瞬間もあったが、昨日荷物を減らして軽量化したおかげでなんとか耐えることができた。

早くタイヤ変えないと。

昨日と今日、土砂降りの中を走って、ほぼ林道な道道まで走り抜いたらバイクが最高にアドベンチャーな感じに仕上がった。痺れる。他のスラクストンは都会の洗練された道が似合うのになぜか私のスラクストンはエクストリームな道がよく似合う。

9時30分くらいに札幌2りんかんに着いた。10時に営業開始だが、予約もしてなくて在庫やピットの混み合いも知らないのでできるだけ早く着きたかった。そのおかげで一着!営業開始を待っていたらバイクが駐車場に続々と入ってきた。そうか、今日は休日なのか!

ドアが開いたらまっすぐ2りんかんの受付カウンターへ行ってスタッフさんにタイヤ交換したい趣旨を伝えると、手際よくタイヤの在庫とピットの予約状況を確認してくれた。運よくサイズのタイヤもあるし、作業にもすぐかかれるとのことだったので会計を済ませて交換作業をお願いした。

タイヤを持ってピットに持っていくとピットのスタッフさんがすぐ対応してくれた。交換作業には約2時間かかるとのことだったので店内で時間をつぶす。ここの2りんかんはYellowHatやSOXが一つになっていて店内が広い。なんとなく馴染みのあるYellowHatの待合室のソファでランチのお店を物色する。そういえば北海道来てスープカリーをまだ食べてない。

ちょうど2時間でタイヤ交換作業が完了した。ブリヂストンのS22、スポーツ志向のタイヤはかなり久しぶりだが、パターンが格好よくて好き。とりあえずこれで一安心。

札幌2りんかんさん、丁寧なご対応ありがとうございました。

お昼は先ほど見つけた「キッチンファームヤード」さん。農場以外になにもなさそうな畑の真ん中にぽつんとお店があった。厳密には農場に併設されたレストランで基本この農場で収穫されたものを使用して料理を作ってるらしい。飾りすぎない自然な感じが印象的なお店だった。

ちょうど昼時だったのもあってお店の入り口近くに4〜5組待ってらっしゃる方たちがいた。思わず人気店に行ってしまってど惑いもあったが、4〜5組であれば待ってられる。20分くらい待ってたら名前を呼ばれて中へ案内された。いよいよスープカリーが食べられると思ったら、店の中に中二階的なスペースがあってさらに4〜5組の先客がいて合わせると約10組の人たちが待っていた。

タイヤ交換に2時間使ってしまったのでランチの待機にまた時間を潰すのは難しい。スープカリーを諦めて、待たずにすぐ食べられるブラックベリータルトとマフィン、コーヒーをお願いした。ブラックベリータルトはその酸味と甘味のバランスが絶妙で今まで食べたタルトの中で一番美味しかったと思う。マフィンも思ったよりボリュームがあってよかった。

今度またスープカリーに再チャレンジしたい!

次の目的地は今日のハイライト「幸福の黄色いハンカチ想い出ひろば」。

実は映画「幸福の黄色いハンカチ」を見たのは最近のことで、北海道に行けないから北海道関連の映画でも見ようかとネットフリックスで検索したらヒットしたのがこの映画だった。

山田洋次監督の演出は素晴らしくて武田鉄矢の若々しい青年の演技や桃井かおりの初々しさは衝撃的だったが、高倉健の渋い格好良さには痺れる魅力があった。しかし、約50年前の北海道の絶景を舞台に広げられる「ザ・ロード・ムービー」なのが何より素晴らしかった。

入り口で500円を支払って中へ入ると勇作(高倉健)さんが住んでいた炭鉱住宅がずらりと並んでいてテンションが上がる。

中へ入ると壁と天井が黄色布とポストイットに埋もれていた。これがビジュアル的にかなりインパクトがあって少し引いてしまう。

隣の部屋に映画のスチル写真とともに哲也(武田鉄矢)のマツダファミリアが展示されていた。映画に使われた2台の中の1台らしい。やっぱりこの時代の直線を大事にしたデザインには独特な格好良さがある。車体にある傷は撮影中に付けられたものなのか?よりリアリティを感じる。

釧路→網走→美幌峠→阿寒湖温泉→陸別駅→帯広→富良野→新得→歌志内→夕張、いつかはこの幸福の黄色いハンカチルートで走ってみたい。哲也はなぜ釧路ではなくて網走駅前でナンパしてたかは未だに疑問だが、そうしないとそもそも話が始まらないので良しとする。

撮影に使われた衣装と劇中の勇作のセリフが書かれた幕がぶら下がっている。

いいか。朱美ちゃんはおなごじゃ。いいか、おなごちゅうもんはな。弱いもんなんじゃ。咲いた花のごと脆い毀れやすいもんじゃ。男は守ってやらないけん。大事にしてやらないけん。ーー聞いとつか、こら

今の時代には少し違和感があるかもしれないが、昭和の時代精神と勇作、高倉健という俳優をよく表すセリフだと思う。やっぱり格好いいと思ってしまう自分も古い人間なんだと改めて実感する。

勇作の家はこうなってたのか!画面越しでは分からなかったが、なかなか興味深い形をしている。この間取りは炭鉱住宅の特徴なのか?貴重なものを見せていただいた。

外に出てもう一度黄色いハンカチを眺めていると映画のエンディングの感動が蘇ってくる。

幸福の黄色いハンカチの想い出ひろばを満喫した後、支笏湖に向かった。千歳市を過ぎて道道16号線に入ると心が落ち着いてくる。ずっと雨が降っていたが、それはもはやあまり関係がなくてもうすぐ支笏湖に会えると高揚感が高まる。それには多分木々に囲まれた道道16号線の影響もあると思う。この道を走るのはいつも気持ちいい。

おお!やっと支笏湖に戻ってこられた。なぜ自分はこれほど支笏湖に惹かれるのか言葉では説明が難しい。いや、言ってしまうと陳腐な感じになってしまうのでそれは敢えて言わず心の中に溜めておきたい。

まだ雲が多いが、明日は晴れるはず。支笏湖を離れる前に晴れてほしい。

今日の宿は「レイクサイドヴィラ翠明閣」。

2年前に泊まった休暇村支笏湖もよかったが、やっぱり湖から少し距離があってあまり支笏湖の隣で泊まってる感じがしなかったので今回は支笏湖温泉の中で一番湖に近い宿に決めた。

一番泊まりたかったのは美笛キャンプ場だが。

駐車場のほうにバイクを停めているとスタッフさんが中から出てきて夜また雨が降るかもしれないと言って玄関横の下屋に停められるように案内してくれた。なんと親切。

部屋は101号室でなんと部屋の窓から支笏湖が見える!左のレストランの建物が少し邪魔だが、102号室からは木以外の障害物なくキレイに湖を楽しめそう。

部屋にマッサージチェアがあってそこに座ると眼の前にこのビューが広がる。疲れた体でマッサージを受けながらこのキレイなレークビューを眺めていると一瞬で落ちてしまう。あぶないあぶない。

部屋の中にも源泉掛け流しの内風呂があっていつでも入れるが、やっぱり温泉といえば露天風呂!貸切なので贅沢に一人でゆっくり温泉を楽しめる。水温は40℃くらいの温めなので長時間入れる。泉質はナトリウム―炭酸水素塩泉・塩化物温泉で神経痛・筋肉痛・疲労回復・慢性消化器病に効能があるらしい。浸かってると肌がスベスベになる美人の湯なのだ。あ、このまま溶けてしまいそう。

後、このレイクサイドヴィラ翠明閣の自慢はイタリアン・レストランの「azzurro」。和食やビュッフェスタイルの夕食の宿が多いが、ちゃんとしたイタリアンコースを出す宿はあまり見たことがない。これはまた楽しみすぎる。

ワインリストが少し弱い以外は麻布や六本木辺りの一流イタリアン・レストランと比べても遜色ない素晴らしい料理だった。量もちょうどよくてお値段もこのクオリティーに比べるとリーズナブル。調べてみると2017年度のミシュランビブグルマンを獲得したらしい。なるほど。

リラックスできる宿に美味しい料理と癒やされる温泉、それに美しい支笏湖。今回の北海道旅で一番の贅沢だった。